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あかちゃんとお母さんのための桶谷式母乳育児相談

診療説明


ご出産おめでとうございます!

入院中、退院後の乳房マッサージや授乳指導。
また、
  ・あかちゃんの体重増加やミルク量
  ・直接授乳ができない
  ・乳房が腫れて痛い
  ・断乳

等、授乳期に関するご相談を承っております。

早めに対応させて頂くことで、改善の一助となればと思いますので、お気軽にお問い合わせ下さい。






2020年7月29日水曜日

食事のお話

今回は、授乳中のお食事について書きたいと思います。

お母さん方から、「桶谷ってもっと食事指導が厳しいんだと思ってました。」とよく言われます。

私自身もそのお話はお母さん方からよく耳にします。では、実際はどうなのでしょうか。


学会や研修では食事とつまりの関係について、その詳細は明らかになっていません。

もちろん食べたものがそのまま母乳の油分として出てくるわけではないですね。ご存知の通り、食物は消化管を通って消化吸収され、血液にのって栄養素は流れているわけです。糖質を取ったから母乳が甘くなるというわけではありません。しかし、食べ過ぎが続くと授乳中でなくても、健康を害するのはみなさんご存知の通りです。

 

 桶谷の研修センターで、私が学生の時に学んだのは、「旬のものを少量ずつバランスよく摂る」というシンプルなものでした。 では、桶谷式乳房マッサージを考案された桶谷そとみ氏(故人)は、当時どのようにお伝えしていたのか、ということを直々に学んだ先輩助産師に聞いてみました。

諸先輩が言われるのは、桶谷氏は何を食べてはいけないということは一言も言わなかったとのこと。

 お母さんたちが分かりやすいように、山菜の食べ方、味噌汁の美味しいだしの取り方、旬の魚の食べ方などを丁寧に説明していたそうです。母子一体性を説く桶谷そとみ氏は、食生活はこれからの家庭をつくっていく上で、健康に直結しているというその重要性を説いていたのではないかと思います。


 病気になった時、私たちは日頃の生活を省みて、食生活などを改めます。

医学には、「未病」という言葉があります。これは2000年前の中国の医学書であるもので、病気になる前段階の状態を指します。自覚症状はないけれど検査値が異常の人、自覚症状はあるけど検査値に異常はみられない人のことを未病と定義するそうです。(日本未病学会から)

健康と病気の間には、グレーゾーンがあります。生活習慣病やメタボリックなどもこれに該当します。

人間ドックや健診は行くけれど、健康を維持する生活はあまり意識してないことが多い日々、出産・子育ては生活が大きく変わる時です。その時、ご家族にとって食事について考える一つの機縁となるのではないかと思います。

 

では、どんな食事が指標となるのでしょうか。

栄養素を考える上で「まごわやさしい」という言葉が一つのヒントになるかと思います。

ご存知の方もいらっしゃると思いますが、ご参考までに。

ま:まめ 大豆・味噌・豆腐

ご:ごま ごま・ナッツ

わ:わかめ ひじき・海藻

や:やさい 根菜・緑黄色野菜

さ:さかな 小魚・缶詰など

し:しいたけ えのき・しめじなど

い:いも じゃがいも・かぼちゃなど

これらの食材で一汁三菜をやろうとすると、忙しい毎日にどっと疲れてしまいそうですが、味噌汁に入れて具沢山にするのも一つの手かと思います。それぞれのうま味が出てグッと美味しくなります。


 また、日本では古来より、普段の日常を「ケ」と呼び、お祭りやお祝いなどの非日常を「ハレ」と呼んで使い分けていました。ケの日があるから、ハレの日がより特別となり、日常にメリハリが生まれます。お子さんのお祝い事、行事など、大切な日は美味しいものでお祝いしたいですよね。それは、授乳中であっても同じように大切なものであるはずです。

(ですが、やはり毎日ケーキ、毎日フルコースなど、ハレの日ばかりが続くと、不調を招くことにもなりかねません。それは現代病とも言われる生活習慣病にもつながるものかと思います。)

生活の中にケとハレの両方があり、そのバランスを大切にすることこそ、充実した生活が繰り返され回っていくのではないでしょうか。

授乳中の食事がつまるかどうか、というより、もっと大きな意味があるように感じています。と、書きながら、私自身も食事について省みつつ・・・。

2020年6月23日火曜日

抱き癖って本当ですか?

みなさま こんにちは。

今回は、育児についてよくご相談のある「抱き癖」について書いていきます。

泣く度に抱っこしていると「抱き癖」がついてしまって、依存心が強く甘えん坊さんになってしまい、
なかなか親から離れられないと考えておられる親御さん、またはお祖母さまにお会いすることがあります。
初めてお母さんになられた方がこの言葉だけを聞くと、
「そのお話って本当ですか?」と不安な気持ちになってしまうのも当然ですよね。

「抱き癖」という言葉は、ずっと昔にアメリカなどで提唱された考え方で、
「自立心を養うためにも抱き癖はつけない方がいい」という考えが日本にも入ってきて、
今のお祖母さま世代に広まっていきました。
その後、いろんな症例をもとに研究がなされ、
「抱かないようにするということは自立心を養うこととは逆行する」ということが分かり、
そのような考え方はなくなっていったのですが、言葉だけが今でも残ってしまっています。
現在の研究では、「たくさん抱っこして甘えられた子ほどしっかり自立して育っていく」という考え方が定説になっています。

精神科医であり、子どもの発達研究に生涯をつくされた佐々木正美先生は、
乳児期に一番大切な心の発達は「基本的信頼感」だと言われます。
「この世界は自分がいてもいい世界なんだぁ。自分には守ってくれる人がいるんだぁ。」と感じる心が育つ時期が乳児期です。
人を信じる感性と自分の価値を実感する感情とを合わせて「基本的安全感」とも言うそうです。
乳幼児期というのは、この感性が大きく培われ、育っていきます。

赤ちゃんの身体の発達は目に見えて分かりやすいのですが、心の発達はなかなか実感としては分かりにくいです。
赤ちゃんの身体的な発達を促すため、
「首が座る→寝返りをする→ハイハイをする→お座りする→つかまり立ちする」という順番にあわせて、
どんな関わり方や遊び方をするかというお話は私もよくさせて頂きますし、お母さんも目に見えるので分かりやすいですね。

しかし、見えにくい心の発達にも、身体と同様に段階があります。
幼児期、学童期、思春期、青年期と、年齢とともに社会的な成熟を果たせるようになるには、
心も段階を経て成長していく必要があるのです。

その一番最初の心の発達が、お母さんとの信頼関係です。
極端に言えば、お母さんは赤ちゃんが今後の人生で出逢っていく周りの人、つまり先生や友達、仲間の代表者ということですね。
1才半くらいまではご家族と協力して、赤ちゃんの欲求に存分に応えて、
おむつを替えたり、おっぱいをあげたり、抱っこしたり、遊んだり、あやしてあげることは、
赤ちゃんとの信頼関係を築くというとっても大切な意味があるのですね。

しかし、ここで勘違いをしないでいただきたいのですが、
「ずっと抱っこしなければ赤ちゃんの心が育たない」ということではありません。

現代社会のお母さんたちは昔と比べて忙しくなっていることもあり、
「泣く度に母乳を吸わせていると他の事ができなくて大変だから母乳育児をやめたい」とか、
「早々に仕事復帰をすることになり、赤ちゃんと一緒に過ごす時間を十分に取れないから私はダメな母親です」
といったお母さんたちに出会うことがあります。
その他いろいろな理由で、満足に赤ちゃんを抱っこする時間が作れないと考えてらっしゃるお母さんもいらっしゃると思います。
授乳のコツについては、また別の機会にお話したいと思いますが、
今回は、「子育ての時間と質」について、私の考えをお伝えしたいと思います。

今はお母さんたちが仕事を持っているのが普通の社会になってきました。
保育園に預けるには0歳児枠じゃないと難しいということで、心残りがありながらも仕事に復帰される方もいます。
さらに、「介護や看病など一人で何役もこなし、とてもじゃないけど余裕がない。」という方や、
育児に入る前まで仕事の第一線で活躍されており、家庭に入ったことで社会とのつながりが持てずに
不安定になってしまう方もいらっしゃいます。
そういう場合、赤ちゃんとずっと一緒に過ごしていくという状況がしんどくなってくるわけです。

では、関わる時間が短いお母さんは、赤ちゃん対して愛情不足になってしまうのでしょうか。
もちろん、赤ちゃんとずっと一緒にいて、周りの支援も得られ、ずっと楽しく過ごせるに越したことはありません。
しかし私は、子どもへの愛情は時間ではなく「質」だと思います。
いくら一緒にいても、ずっと携帯を見ている、不機嫌でイライラしてるより、
短時間であっても、笑顔で抱きしめてあげられる時間を持てる方が、よっぽど良いのではないでしょうか。
そのお母さんの愛情こそが、赤ちゃんの心の発達につながっていくのです。 

もしかしたら、保育園で素敵な保育士さんとの出会い、助けてくれるママ友との出会い、いろんな世界が広がっていくかもしれません。
仕事があるおかげで心に余裕が持てる方、大人と話せる喜びで心が救われる方も多くいらっしゃると思います。
そのことでお母さんの気持ちにゆとりが生まれ、笑顔で赤ちゃんに向き合える時間がつくれるのなら、
それはお母さんと赤ちゃん両方にとってとても良いことだと思います。

大分話が大きくなってしまいましたが、お伝えしたいのは
「抱き癖ってないから、好きな時に抱っこしてあげてくださいね」っていう単純なことです。(笑)

日々、幾度となく赤ちゃんを抱っこする瞬間、
それはお子さんが大きくなって、友人を信頼し、同僚を信頼し、人間関係を作っていく基盤をお母さんが赤ちゃんに提供している瞬間なのかもしれません。

多様性にあふれた時代に、お母さんが生き生きと頑張る社会を応援したいと思います。


2020年3月21日土曜日

母乳は薬で止めるもの?&赤ちゃんのための備蓄について

みなさま こんにちは


季節がら母乳をやめるお話が多くなっていますが・・・

 時折、母乳をやめるために薬を飲んだという方がいらっしゃいます。

その理由は、乳首が痛くて、授乳を続けられないや、母乳が出すぎてつらい。

乳腺炎が怖くてもう嫌になった。など、様々です。

そして、病院から母乳をとめるお薬をもらい、その後搾ってもらいたくてと、母乳外来にいらっしゃいます。

 その時、あーすっきりした!と仰る方はあまり聞いたことがありません。

内服した後にお母さんが母乳外来に見えて仰るのは、今からまた出るようになりますか? という切ない気持ちです。

内服した後は、急激に、もしくは、徐々にホルモンの働きを止めてしまいます。

 そこに、お母さんの本当の気持ちとの乖離があるように思います。

本当の気持ちは、「止めたくなるほど、乳首が痛く、辛い」ということ。そして、痛みを和らげる為の方法は他にもあります。

乳腺炎にならないように、気を付ける方法を教えてもらうこと。それがとても大切なのです。

もちろん、母乳を止める必要のある方もいらっしゃる事と思います。

しかし、薬を飲まなくても、母乳の分泌は安全に止めていけます。

出産後、または、お腹の中で赤ちゃんを亡くされた時、母乳をとめるお薬はよく処方されますが、

最近は、母乳を供養として、お供えしたいと言われる方にも対応される病院も増えてきました。

なぜなら、母乳を薬で止めても、悲しみが消えることがないのは容易に想像できます。

数日間または、四十九日までは、母乳をお供えしたいという想いで搾乳を継続し、
最後に私の所に搾ってもらう為にと、来られる方もいらっしゃいます。

その時、語られるのは、「気持ちを聞いてもらいながら、子どもにできること、してあげたかったことをやることで、気持ちの整理が少しずつ進んでいくような気がする。」

と、語っていました。

 悲しみは辛さを手放していくには、時間がかかります。

心はとても矛盾していますが、感情をしっかり味わうことで、そこから解放されていきます。

悲しみ切る。お話を聞いてもらい、悲しみは悲しみのまま受けとめてもらう。

これが抜けていることが、薬一つでは解決しない根本的な要因だと私は感じています。


是非、そのお薬を飲む前に、母乳相談に足を運んでみて下さい。

内服は、そのあとのご判断でもいいのではないかと思います。

自宅でのストレスフルな時期が続いていますね。

外はこれから桜の季節。暖かくもなってきて、愛でるお散歩によい時期です。

上手にストレス発散していきたいですね。



長く自粛も続いていますが、今後どうようになるにしても、

ワンサイズ大きめのおむつや、ミルクを1ヶ月分は備蓄するなどは、普段からされておくとよいですね。

防災の視点で言うと、お水、日持ちのする食料など、非常時に持ち出すものも、もう一度見直しをしましょう。

では。


2020年2月26日水曜日

卒乳・断乳のお話

みなさま こんにちは

 3月も差し迫り、卒乳・断乳をお考えの方もいらっしゃるかと思います。

この時期は、お仕事復帰前などで、ご相談にいらっしゃる方も増えてきます。

卒乳までの道のりは、これまで、どのような母乳育児をされているかによっても変わってきますよね。

どうしても子どもが泣いちゃって。。。という方や、あっさり子どもから辞めました。という方など、母と子の数だけ、色々な断乳・卒乳があるかと思います。

そして、どれも良い悪いはなく、その親子のあり方です。

断乳した先には、今までおっぱいで片付けられていた事が、
お話し合いや、スキンシップ、様々な関わりに形を変え、その後もずっと続いていくことをいつもお母さんと赤ちゃんに教えて頂きます。


 今まで母と子が一体だったのが、これからは一人の人として自立していく、その小さな一歩をお母さんが応援するわけです。

時には「おっぱいが終わるとママまでいなくなったような気になる。」そんな心情のお子さんもいらっしゃるようです。

「どこにも行かないよ。ずっとそばにいるから、安心しておっぱい止めていいんだよ。」と、そんな気持ちで送り出してあげられると、お子さんも安心するのではないでしょうか。

 授乳を予定より早く辞めてしまう状況に置かれている方は、切なさや、悲しみ、時には罪悪感などもお持ちの方もいらっしゃいます。

どの時期で止めても、お母さん方は「もう少し上げた方が良かったかな。」と思う気持ちは多少なりとも持っているとお伺いすることがあります。

それは、母性がしっかり働いている証拠です。ですが、決して悪いことではありません。

お子さんに授乳以外でも関わることは、たくさんあると思います。

お母さんが笑顔で元気でいられる事。

それはお子さんに対して「生まれてきて良かったんだよ。ありがとう。守ってあげるからね。」というメッセージです。

謝る必要もありませんし、しっかり抱きしめてあげて下さい。

また、なかなか離れられず困っている方は、まずは、「おっぱいは食事」という点に戻って関わっていきましょう。

泣いた時はすぐおっぱいという生活から、徐々にリズムをつけていくのはいかがでしょうか。
 
特に寝る前の授乳を整えていくことが有効のようです。

寝る前の授乳をしながら、力が抜けたら、口からおっぱいを離す。 
また欲しがるなら、咥えさせて、数十秒落ち着くまで飲ませて、力が抜けてきたら、また外して。。。。
の繰り返しをするうちに、どんどん外しやすくなってきます。

お子さんにもよりますが、数日それに付き合ってあげると、寝る前の儀式がおっぱいを咥えるしかなかったのが、少しずつ変化していくかと思います。

お母さんの根気と忍耐が求められますが、「ご飯で大きくなれると思うよ」と、

信じて背中を押してあげることが、お子さんの気持ちの軸になり、一歩を進むことができるようになると思います。

その後のお子さんの様子などもよく観察してあげて下さいね。 

何事もないようで、健気に頑張っている最中ではないでしょうか。

 2歳まで母乳を上げたい!という方ももちろんいらっしゃると思います。

それはそれで、素晴らしいことです。

止めにくくなるのではないかと心配される方もいらっっしゃいますが、大丈夫です。

安心して授乳してください。

コツは、生活リズムをしっかり整えてあげることに加えて、授乳を組み込んでいくとよいかと思います。

朝起きる時間、夜寝る時間、お風呂の時間など、生活リズムでお子さんの体内い時計は整い、心と体は成長していくと言います。

ご心配なことはいつでも伺いますので、ご相談下さい。

大事な思い出の1ページになりますように。。。